”演技をするうえで一番大事なことは心(感情)の動きです”
こう言われてあなたはどう思いますか?
「なに当たり前のことを言っているんだろう?」と思ったあなたは才能がある人です。
少なくとも私が演技を始めたときは”心(感情)の動き”と言われても全くピンときませんでした。
残念ながら、当時の私はセリフをただなんとなくしゃべっていただけだったのです。
心(感情)が動き、その結果セリフが出てくるという、とても当たり前なことを自然と演技でできるようにならなければ声優にはなれません。
今回は、演技をするうえで一番大事な「心(感情)の動き」について解説していきます。
演技で心(感情)が動いてますか?
演技で心(感情)が動くということは、実はとても難しいことです。
日常生活に台本はありません。
次に何が起こるのかが全く分からない状態です。
その場で起きたことに自然と心が動き、自然にリアクションができます。
しかし、演技になると途端に難しくなります。
なぜなら、台本があり、次に何が起こるのかわかっているからです。
しかも、セリフは何度も練習しています。
それを、あたかも初めて起こったかのように、心(感情)を動かし、演じなければならないのです。
とても難しいことではありますが、これが演技の基本であり、一番大事なことです。
演技初心者の方は、まず心(感情)を動かすということを徹底して訓練する必要があります。
なぜなら、心(感情)を動かして演技をすることができなければ、絶対に声優にはなれないからです。
演技で心(感情)が動くって具体的にどういうこと?
声優養成所で舞台上演の稽古をしていたときにこんなことがありました。
同期の女の子が怒らないといけないセリフを悲しく言ってしまったのです。
すると演出家がこう質問しました。
なぜ、悲しい気持ちでセリフを言ったの?
すみません。悲しくなってしまいました。
台本上の構成としては怒らなければいけないシーンでした。
しかし、その女の子は演じていて悲しくなってしまったのです。
当時私は何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。
怒っているシーンなのに、何で悲しいセリフを言うのか、そこは怒らないといけないじゃないかと思いました。
でも違うんです。
その女の子は、心(感情)が動いて演技をしていたんです。
私が知っている限り、普通の人はセリフをなんとなくしゃべるか、怒っているシーンだから怒りの感情込めてしゃべろうとします。
本当にその気持ちになって、心(感情)が動いて、セリフをしゃべっている人はごくわずかです。
でもその女の子は心(感情)の動きに任せてセリフをしゃべっていたのです。
結果としては間違ったセリフをしゃべったことになりますが、過程としてはとても正しいことをしています。
あとは役を深めていき、その役の心の動きをつかんでいけばいいだけなのです。
心(感情)が動かない人が、心(感情)を動かそうとするのはとても大変です。
でも、心(感情)が動いているのであれば、あとはそれを自分でコントロールできるようになればいいだけです。
心(感情)が動いてセリフをしゃべれば必ず相手に伝わります。
セリフに気持ちを込めるのではなく、その気持ちになって、ただセリフをしゃべればいいのです。
演技初心者の方は、セリフをどう言うかではなく、その場の状況や相手のセリフを聞いて、自分の心(感情)を動かすことを大事にしましょう。
心が動かない人は声優に向いていない?
では演技で心(感情)が動かない人は声優に向いていないのでしょうか。
答えはNOです。
人によってスタート地点は違います。
訓練していけば、必ず演技で心(感情)が動くということを体感できるようになります。
そのためにも日常生活で起きた感情の揺れ動きを自分の引き出しの中に入れるように意識してください。
悲しかったこと、楽しかったこと、辛かったこと、腹が立ったこと。
それらすべてがあなたの大切な財産です。
演技をするときにゼロから作るのではなく、自分の引き出しの中から、近い感情を呼び起こしてみましょう。
そうすることで演技にリアリティが生まれます。
難しいことを言っているように感じるかもしれません。
でも、思い出してみてください。
演技でなければあなたも経験しているはずです。
思い出し笑いをしたことはありませんか?
恥ずかしいことを思い出したことはありませんか?
腹が立ったことを思い出してむしゃくしゃしたことはありませんか?
そういったときは例外なく感情が沸き上がってきているはずです。
あたかも、その時に感じているかのように。
それを演技に活用できるように訓練していきましょう。
まずは意識することが大切です。
意識して訓練していけばきっと心(感情)が動くようになります。
セリフの言い方に頼ってはいけない
演技初心者のうちはセリフの言い方に頼るのをやめましょう。
変なクセがついてしまう可能性があります。
まず一番大事なのは心(感情)の動きです。
そこに重点を置いて訓練に励みましょう。
心(感情)が動いていないのに、一生懸命セリフに感情を込めようとしたり、言い方をこねくり回してしまうと、本質からどんどんずれていってしまいます。
最初はうまくいかないのが当たり前です。
演技をした結果よりも過程を大事にしましょう。
技術的なことは後からいくらでもついてきます。
しかし、根幹である心(感情)の動きがわからない人はいつまで経っても演技が上達しません。
遠回りのように思えるかもしれませんが、演技で心(感情)が動くということがわからない人は、セリフの言い方に頼るのをやめましょう。
まずは心(感情)が動くこと。
その一点に集中してレッスンに臨んでみましょう。
まとめ
今回は、演技をするうえで一番大事な「心(感情)の動き」について解説していきました。
心(感情)が動いていない状態で演技をしてセリフをしゃべっても全く意味がありません。
もちろん、一流の方たちにはすぐにバレてしまいます。
ちゃんと心(感情)が動いてさえいれば、どんなに下手だろうと、一流の人たちは表現を汲み取ってくれます。
心(感情)を動かすことができない人は、いつまで経ってもプロの声優になることはできません。
まず一番初めに習得しなければならないことは、心(感情)を動かして演技をすることです。
演技にダメ出しをされると枝葉の部分が気になりますが、大事な根幹の部分である心(感情)の動きを絶対に忘れないでください。
心(感情)の動きを大事にして訓練に励めばあなたの演技力は絶対に向上します。