声優養成所体験談では私がプロの声優になるまでに「学んだこと」「体験したこと」を記事にしています。
全く才能がなかった私が、どうやってプロの声優になったのか。
声優を目指すきっかけから、声優事務所に所属して現場に行くまで、すべての過程を時系列で公開します。
声優を目指したいけど、向いているかわからない、自信が持てないと悩んでいる方はぜひ読んでみてください。
発声をするための自然体
さて、今回は1年目で受けた発声のレッスンについて書いていきます。
発声のレッスンと聞いて、あなたはどんなレッスンをイメージしますか?
声を出して「あいうえお、かきくけこ」などやると思いますよね?
私も初めはそう思っていました。
しかし、私の受けた発声レッスンでは、まず始めに声を出しませんでした。
おどろきますよね?
では、何をするか。
まず始めに、自然に立つということからスタートしました。
私たち人間は様々な環境で育ち、背格好も性格もみんな違います。
なので、単純に言うと、その人の「クセ」で立っています。
自分のことはわかりませんが、周りの人を見るとよくわかると思います。
- 腰を張って立っている人。
- 猫背で立っている人。
- 胸を張って立っている人。
人によって「クセ」は様々です。
その「クセ」が声を出すときに邪魔になるので、自然な立ち姿で声を出しましょうというところからスタートしました。
そして一番自然で理にかなった、骨で立つというのをレッスンで徹底的に繰り返し行います。
それができるようになってからようやく声を出す・・かと思いきや、まだ声は出しません。
次は呼吸について、理論的に学び、体で体験、訓練していきました。
発声の先生は何かを教える時に、すぐに答えを言うようなことはしませんでした。
質問を投げかけ、生徒に考えさせるようにしていました。
当時の私は全くわからず答えられませんでしたが、あなたも少しだけ考えてみてください。
まず始めに発声の先生からこう質問が投げかけられました。
呼吸筋には大きく分けて2種類の筋肉がある。それは何か?
最初私は「こきゅうきん?」となっていました(笑)
全くもって考えたことのないことだったので答えが出てきませんでした。
ほかの生徒が何名か答えていましたが、正解は出せていませんでした。
正解は”吸気筋“と”呼気筋“です。
つまり吸う筋肉と吐く筋肉ということでした。
では”吸気筋”と”呼気筋”の代表的な筋肉は何か?
というような感じで質問は続き、体の構造や筋肉、声の出る仕組み、お腹から声を出すということについて詳しく教えてもらいました。
そのあとに筋肉の動きを感じる運動や、訓練を行いました。
なかなかここまで詳しく学ぶ機会もないと思うので本当に貴重なレッスンだったと思います。
いよいよ声を出していく段階へ
自然な立ち姿、呼吸について学び、いよいよ声を出していきます。
しかし、いきなり強く声を出すようなことはしません。
呼吸を大事に、息に任せて声を出すということを繰り返し行います。
発声の際に息を吸おうとすると、無駄な力が入り、うまく吸えません。
筋肉を緩めることで勝手に息は入ってくるのです。
一度やってみるとわかると思うので試してみてください。
まずゆっくり息を吐きます。
筋肉を使い息を吐いているので、どんどん筋肉が緊張していきます。
そこで、緊張した筋肉を緩めてやると勝手に息が入ってくるのです。
このように呼吸時に筋肉は緊張と弛緩を繰り返しています。
息は吸うのではなく、筋肉を緩めれば勝手に入ってくるものだということを体に覚えさせることが大事です。
そして、呼吸に任せて、声を乗せていくように出していきます。
具体的な訓練方法はここでは触れませんが、「S→Z→Za」という流れで息に任せて声を出すということを繰り返し行っていきました。
この訓練は最も基本的で大事な訓練だと教えられました。
声帯がもっとも開放された自然な状態で息によって「ならされている」ということを感じられます。
弦に例えると「開放弦」と同じだと言われました。
ギターなどでコードを押さえて鳴らしている状態ではなく、コードを押さえず、開放している状態で、その楽器の本来の音を鳴らすという考え方です。
この訓練では自分の声というものを発見、そして改めて認識できるものでした。
発声のレッスンではこのように自分の声を発見、認識して、その本来の自分の声で演技ができるようにするための訓練を行いました。
普通にしゃべる大切さ
そして、1年の後半になってくると芥川龍之介の小説を使い、声を出していきました。
発声の先生はいつもこう言っていました。
訓練通りに出せ!
余計なことはするな!
ふつうにしゃべれ!
せっかく訓練で自分の自然な声というものを発見していったのにも関わらず、実際に表現をしようとすると、いつも出している声を使ってしまうのです。
その人本来の自然な声、「開放弦」の状態でしゃべらなければなりませんが、その人の悪い「クセ」が表現をしようとすると勝手に出てきてしまうのです。
まずは、その人本来の自然な声でしゃべることができるようにすることが求められていたのです。
この普通にしゃべるということが実はとても難しく、プロに近づけば近づくほど求められてきます。
そしてプロの声優は必ずこれができます。
苦い記憶ですが、私が声優事務所に所属し、初めてボイスサンプルを録音した時、担当のディレクターから同じように言われました。
あなたの声を聴かせてほしいのだから、ふつうにあなたの声でしゃべりなさい
実はふつうに自分の声でしゃべることが、当たり前のようで実際みんなできていないんです。
そして最初はただふつうにしゃべっていると、演技をしていない、表現していないような、とても不安な気持ちになるものです。
声優養成所1年目の私はふつうにしゃべるということがどういうことか最後まで理解することができませんでした。
ただ、当時必死に発声の訓練をしていたおかげで、何年後かに気づくことができました。
声優養成所の講師の方がよくこう言っていました。
今は「この人なに言ってるんだろう?」とわからないことが多いかもしれない。
だけど、何年後かに「あのとき言っていたのはこういうことだったんだ!」と気づくときが必ずくる。
そうなんです。
講師の方や先輩が言ってくれたことは、何年後か先に理解できる日が、気づく日が必ず来るものなんです。
なので、あなたも言われたことはできるだけ忘れずに心に記憶しておきましょう。
さて、今回の記事はここまでです。
次回は演技基礎のレッスンについて書いていきます。