外画の吹き替え、アテレコは声優の仕事の一つです。
外画の吹き替えの仕事が入ると、本番収録に向けて自宅でリハーサルをすることになります。
略して「リハ」ということが多いのでこの記事でもリハと言わせてもらいます。
仕事が入り、現場に行くまでは、数日間しか時間がありません。
その間に作品への理解を深め、自分の役を深めていく必要があります。
では、実際リハではどのような作業を自宅で行っているのか気になりますよね?
実はリハの方法というのは、人それぞれで、厳密に方法が決まっているわけではありません。
声優養成所でもリハの方法について、細かくは教えてくれないのではないでしょうか。
リハは、色々な人の方法を参考にして、自分なりの方法を模索する必要があります。
だからこそ、リハの方法について、悩んでいる人が実はとても多いのです。
今回は、そんな人のために、私のリハの方法について紹介していきます。
リハの方法に悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
台本の読み込み
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一番最初にやることは「台本を読む」ことです。
香盤表に役と自分の名前が書いてあると、どうしても自分の出番について確認したくなります。
どれくらい出ているのか、セリフの量はどれくらいなのか、演じている役者の背格好など、ピンポイントで確認がしたくなります。
でも、その気持ちをぐっと押さえて、まずは台本を読みます。
基本的には2回くらいは台本を読んで、全体の流れ、テーマなど理解を深めていきます。
台本を読んでいく中で、チェックもしていきます。
やはり吹き替えの台本なので、映像なしの状態で読んでいくと、どうしてもわからない部分が出てきます。
そこに関しては「?」のマークや、書き込みを入れて、後ほど映像チェックの時に確認します。
映像は答えです。
いきなり答えを見るのではなく、まずは台本を読んで想像していきます。
作品の雰囲気、役のイメージ、シーンの解釈など、台本からできる限り読み取ります。
そのあと映像を見ることでいろいろな発見ができます。
V(映像)のチェック
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台本を何度か読み、理解を深めたら、次にV(映像)を見ていきます。
台本片手にV(映像)を見たくなりますが、台本は一切見ずに、V(映像)だけを見ていきます。
英語なので何を言っているかはわかりませんが、台本を何度か読んでいるので、なんとなく何を話しているのかはわかります。
台本片手にV(映像)を見ると、どうしても台本に目を落としがちで、V(映像)のチェックがおろそかになります。
まずはV(映像)だけに集中して見ます。
先に台本を読んでからV(映像)を見ると、色々な発見や驚きがあります。
台本を読んだだけでは謎だった部分も、映像見ると意味がわかります。
そして、演じている役者を見ても驚きと発見があります。
台本を読んだ時と、映像を見た時で、役のイメージが変わってきます。
どんな演技をしているのか、表情や体の動き、相手との距離感など、できる限りの情報をとらえていきます。
そして、V(映像)を何回か見た後、もう一度台本を読んでいきます。
最初に読んだ時とだいぶイメージが変わってきたことが自分でもわかります。
そして次は台本片手にV(映像)を見ていきます。
ここまできて、やっと何を話しているのかがはっきりとわかります。
こうして丁寧に見ていくと、作品の流れや全体像がとてもよく理解できます。
自分の役をチェック
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次はいよいよ自分の役をチェックしていきます。
人によって方法は様々ですが、私の場合は、まず下準備をします。
自分の役がしゃべっている部分を、一目でわかるように赤ペンで囲んでいきます。
人によっては蛍光ペンで自分のセリフを塗っていく人もいます。
そして、「タイム」を台本に書き込んでいきます。
V(映像)にはタイムコードと言って、時間が表示されています。
自分のセリフのタイムを、セリフの上に書き込んでいきます。
29秒でセリフが始まるのであれば「29」と書きます。
本番はラジオにイヤホンをさして、耳から流れてくる音声を頼りに声を当てていきますが、基本的に自分のセリフのタイミングはタイムを頼りにします。
耳で聞いてから出るとセリフが遅れますし、自分の声や相手役の声にラジオの音声がかき消されることがあるので、タイムを台本に書き込むことはとても重要です。
タイムの書き込みが終わったら、自分の役を深めていきます。
まず、作品の雰囲気、テーマ性、出演する話の軸となる部分について理解していきます。
そして、自分の役の出ているシーンについて深掘りしていきます。
相手との関係性や、自分の役の目的、そしてそのシーンで表現したいことなど、演じる上で必要な情報をV(映像)と台本から読み解いていきます。
もちろん感情の流れや、動きについてもきちんと追っていきます。
それらが理解できたあと、映像の役者の体の動きや、呼吸の流れなどをチェックしていきます。
どこで息を吸っているのか、どんな体制でしゃべっているのかなどです。
息については台本に書いてあることもありますが、書いてない部分もあるので、できる限り拾っていきます。
相手との物理的な距離感も大事です。
対面しているのか、後ろから話しかけているのかなど、状況によって演技が変わってきますのでそこもチェックします。
そして最後に「AD」「息」「笑」など細かいところをチェックしていきます。
ADとはアドリブのことで、声優が自分で考えて作っていかなければならない部分です。
息は台本に(息)として書かれています。
吐く息なのか吸う息なのか、鼻からなのか口からなのか、どんな感情なのかをチェックしていきます。
笑いは台本に(笑)と書かれています。
どんな笑いなのか、長さや感情などをチェックしていきます。
演技リハ
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ここまで丁寧にチェックを重ねてきて、どう演技するのかもイメージができました。
いよいよV(映像)に合わせて演技をしていきます。
ここからはひたすら繰り返しの作業になっていきます。
自分のイメージした演技ができているのか、V(映像)に合った演技ができているのかということを、徹底的に突き詰めていきます。
繰り返しリハをしていくことで、いろいろな発見もあります。
リハをやりすぎると、演技がガチガチに固まってしまうので、やりすぎないほうがいいという人もいます。
固めすぎると、ダメ出しをされても演技を変えることができない人が多いからです。
相手役の演技によって、自分の演技も変わらなければなりませんが、固めすぎると相手のセリフを無視してしまう可能性があります。
しかし、私の場合は、徹底的にリハをして演技を固めていきます。
もちろん、現場で演技に対してダメ出しがあった時は必死で変える努力をします。
ここに関しては人それぞれの段階があると思っています。
現在の私は、繰り返しリハをして、作り上げたものを自信をもって提示するという段階なんだと思っています。
何度も繰り返しリハをしていれば、現場の緊張感、マイクワーク、そのほか様々なことがあったとしても作り上げた演技が提示できます。
恐らくもっと現場経験を積んでいくことで、リハの方法も変わっていくのではないかと感じています。
以上が私のリハの方法です。
冒頭でもお話ししましたが、リハの方法に正解はありません。
声優仲間との雑談や、レッスンでのダメ出しなどで、自分なりのやり方を模索している人が大多数だと思います。
また、台本やV(映像)のチェック方法についても人それぞれです。
今回紹介したリハの方法は、あくまでも一例として捉えてください。
参考にして、いいと思ったことを取り入れてみてください。
外画吹き替えアテレコ収録の全容
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基本的には本番1週間前くらいに台本とV(映像)が提供されます。
台本の香盤表に自分の名前が書かれているのはいつ見ても感動するものです。
本番はとても速いペースで収録が進んでいきます。
台本修正、マイクワークなど、自分の役の事だけを考えている余裕は全くありません。
何よりも先輩方が沢山いるので、新人のうちはとても緊張します。
だからこそ、本番までの数日間の間に、自分の役を深め、仕上げていく必要があります。
現場では、一度、テストを行います。
自分の演技解釈の提示をそこで行います。
テストでは、自宅でリハしてきた演技をきちんと提示します。
テスト後に、ディレクターからダメ出しがあります。
自分の演技が間違っていなければ、特に軌道修正のダメ出しはありません。
自分のリハしてきた内容が間違っていないということなので、自信を持ちましょう。
問題なのは、自分の解釈が間違っていたときです。
ダメ出しで演技の軌道修正が入ります。
しっかりとダメ出しの内容を聴き、即時に修正できるよう頭をフル回転させましょう。
テストのダメ出しの後に、本番があります。
本番ではダメ出しを反映させた演技が求められます。
声優にとって、瞬発力、適応能力というものはとても重要です。
ダメ出しが終わり次第、すぐに本番となりますので、即座に演技を変える必要があります。
本番が終わると、抜き録りが始まります。
セリフが被っているシーンや、うまくいかなかったシーンを、抜いて収録していきます。
最後にガヤ録りを行います。
ガヤは喫茶店や、街中など、メインキャラクターの後ろにいるエキストラの人たちの声の事です。
台本にはセリフはありませんが、ガヤガヤと何かしゃべっている声が聞こえます。
その声を日本語で収録することをガヤ録りと言います。
ガヤは基本アドリブで行います。
その状況にあった会話というのを声優がアドリブで演技します。
以上で外画吹き替えアテレコ収録は終了となります。
最後に
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今回は、私が実際に行っている、外画吹き替えアテレコのリハ方法について解説しました。
緊張しやすい人、その場で柔軟な演技ができる人、人によって持っている性質は様々です。
きっとその人に合ったリハの方法があると思います。
リハがなかなかうまくいかないことも実際にはあります。
その時は、V(映像)の役者と同じ動きをしながら、同じ演技を実際に自分の体を使ってやることもあります。
V(映像)の中の人があたかもしゃべっているような演技をする。
言葉で言うのは簡単ですが、本当に難しくやりがいのある仕事です。
映像になんとなく合わせるのではなく、画面の向こうの役者と同じように呼吸をし、演技をしていく必要があります。
一番ディレクターに嫌われるのが、自分の役が出ている部分だけチェックしてくる声優です。
作品全体を見て演技を構成している人と、部分的に見て演技を構成している人は、プロの目から見ると一発でバレてしまいます。
そうなると次からは現場に呼んでもらえなくなります。
自分の役、出演しているシーンは、一つの作品のワンピースであることを絶対に忘れてはいけません。
緊張しやすい人、その場で柔軟な演技ができる人、人によって持っている性質は様々です。
きっとその人に合ったリハの方法があると思います。
私のリハのやり方が少しでもあなたの参考になればとても嬉しいです。
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