声優養成所体験談では私がプロの声優になるまでに「学んだこと」「体験したこと」を記事にしています。
全く才能がなかった私が、どうやってプロの声優になったのか。
声優を目指すきっかけから、声優事務所に所属して現場に行くまで、すべての過程を時系列で公開します。
声優を目指したいけど、向いているかわからない、自信が持てないと悩んでいる方はぜひ読んでみてください。
上演実習に向けて台本探し
2年目からはいよいよ舞台上演中心のカリキュラムになっていきます。
レッスンはすべて上演実習の稽古になります。
まずは、舞台上演をする台本を決めていくところからスタートです。
生徒が自分たちで台本を探し、上演する作品を決めていきます。
この台本探しがなかなか大変でした。
台本はどんなものでもいいわけではありません。
出演者の人数、男女比、舞台セットの実現可否、そういったところも考えて探さなければならないからです。
稽古日までに台本を見つけ持っていかなければなりません。
本屋さんや図書館を周り、戯曲(舞台用の台本)を必死に探していきました。
稽古場に持っていかなければならないので、基本的には図書館で探して借りるというのを繰り返します。
そして、台本を持っていくためには自分で1回読む必要があります。
内容もわからず、面白いかどうかもわからない台本を持っていくわけにはいかないからです。
この台本探しの時期は多くの戯曲を読みました。
実は多くの本を読ませることが演出家の先生の狙いでした。
自分たちで選ぶことになれば、必然的に多くの戯曲を読むことになります。
そして、こうでもしないと本を読まない年代だと思われていたようです。
狙い通り生徒達は多くの戯曲を読み、面白い作品を必死に探していきました。
台本が決まるまでの間に関しては、演出家の先生は基本的に見ているだけです。
稽古は生徒達主導で行い、話し合いながら上演台本を決めていきます。
稽古日に生徒達で台本を持ち寄り、上演可能だと思う台本を配役して読んでいきます。
読み終わった後、各々が感想を言い、候補として残すのか話し合っていきます。
候補として残った場合は舞台セットを考えていきます。
例えば、場面転換でセットがガラッと変わる場合、それが実現できるのかという話になってきます。
もちろん、声優養成所で一度も舞台をやったことがない私たちではわかるはずもないので、演出家の先生に話を聞きます。
そうやって、台本を探し、読んで、検討というのを何度も繰り返し、上演台本を決めていきます。
そしてようやく上演台本を決めることができました。
次はいよいよ配役を決めていくことになります。
屈辱の配役決め
台本が決まった後はいよいよ配役決めです。
台本決め同様、配役決めも生徒達主導で行っていきます。
一人一人アピールタイムとして、希望シーンで希望役を演じていきます。
そして、生徒全員で無記名投票を行い配役を決めていきます。
演出家の先生は投票はしませんが、演じた後に感想を言ってくれました。
この感想で生徒の投票が変わっていくので、いい評価がもらえるようにみんな必死でした。
全員に対して配役をしたものを無記名投票するので、自分に投票されないということはありません。
必ず何かの役には投票されているシステムです。
何度か投票を行い、少しづつ配役を決めていきます。
役によっては一騎打ちになり、熱い戦いが繰り広げられることもありました。
そして投票の結果、私は作品の中で最年長の役を配役されました。
悲しいことではありますが、私は消去法で選ばれてしまったのです。
メインの役、重要な役は、生徒の中でも演技が上手いとされている人たちに票が集まっていきました。
そうやって選んでいくと最終的に余る役というのが出てきます。
私は、全く演技ができなかったので、あまり出番のない最年長のおじいちゃんの役になってしまったのです。
実年齢は最年少なのにも関わらず最年長の役をやることになっていました。
自分に実力がないのはわかってはいましたが、とてもショックでした。
しかし、大きな役を演じきれる自信もありませんでしたので、もらった役を必死に頑張ることにしました。
初めての本読み
台本と配役が決まり本格的に舞台の稽古に突入していきます。
まずは本読みから行っていきます。
自分の役を深めていく大事な時間ではありますが、当時の私は全く理解できていませんでした。
本来であれば、稽古に行く前の最低限の準備として、時代背景を調べ、自分の役の目的や感情などを考えておくべきです。
しかし、当時の私は稽古場に行くための最低限の準備が全くできていませんでした。
当時の私はやっているつもりでした。
この「やっているつもり」というのがかなり厄介でした。
私はやるべき準備ができていないことに自分で気づけていなかったのです。
当時は今のようにネット社会ではなかったので、時代背景を調べるためには図書館に行くしかありませんでした。
上演する作品は時代物だったので、時代背景、衣食住について調べなければなりませんでした。
戦争の話もしているので、戦争についても本を読んで勉強する必要があります。
学校で習っただけの内容では全く足りないからです。
図書館に行き、時代背景、衣食住について調べました。
そして自分の役についてもできる限り考え台本に書き込みもして稽古に臨みました。
しかし、演出家の先生から台本の中に出てくる内容についての質問をされても全く答えることができませんでした。
演出家の先生が言うことが自分の想定を越えていたのです。
全然深く考えられていないということですね。
そして、ダメ出しをされてもどう改善して演じればいいかがわからず、何も変えることができない状態でした。
稽古では本読みを通じて、時代背景、衣食住など、演者の中で認識合わせしていきました。
もちろん、舞台セットについても大まかに決めていきました。
そして、いよいよ次回の稽古からは立ち稽古になるという段階まできました。
さて、今回の記事はここまでです。
本読みではまだ優しかった演出家の先生も立ち稽古になるとどんどん厳しくなっていきます。
ここから地獄のような日々が始まります。