【声優養成所体験談17】2年目!上演実習②立ち稽古開始!地獄のような日々

声優養成所体験談では私がプロの声優になるまでに「学んだこと」「体験したこと」を記事にしています。

全く才能がなかった私が、どうやってプロの声優になったのか。
声優を目指すきっかけから、声優事務所に所属して現場に行くまで、すべての過程を時系列で公開します。

声優を目指したいけど、向いているかわからない、自信が持てないと悩んでいる方はぜひ読んでみてください。

目次

初めての立ち稽古

本読み期間も終わり、いよいよ立ち稽古に突入します。

立ち稽古ではセリフを覚えていることが大前提です。
台本片手に立ち稽古しても何の意味もありません。

初心者にありがちなのですが、台本を持っていると台本に逃げていきます。
自分がしゃべっていないときや、間が持たないときに台本に目を落として逃げてしまうのです。

演技はリアクションが大事です。
舞台上に出ているときはずっと心を動かし続けなければなりません。

自分がしゃべっていないときの心の間をどうやって埋めていくのか。
これがとても大事なのです。

当時の私はというと、台本を覚えるのは早かったので、立ち稽古の段階ではすべてのセリフを覚えていました。
もちろん、セリフ自体が少ないというのもありましたが、勝手に覚えてしまうくらいには自主練習をしていたのです。
ただ残念ながら、当時の私は一生懸命セリフを読むというような全く意味のない練習をしていました。

立ち稽古が始まり1シーン目から少しづつ動きがつき、演出も入っていきます。

初舞台という人も少なくはなかったので、丁寧に演出家の先生も教えてくれていました。

そして、本役の人が演技をしてうまくいかなかったところについては他の人にも勉強のためにやらせていました。

人ができていないところを見ると、何でこんな簡単なことができないんだろうと多くの人が思います。
しかし、いざ自分がやってみると、これがなかなかできないものなんです。

人の演技をみることは勉強になります。
でも、自分はできると思って見ているのと、自分もできないと思って見ているのでは、吸収の速度が段違いです。

それをわからせるために、演出家の先生はうまくいかないシーンを色々な人にやらせていました。
そして演技の難しさと、どうすればできるようになるのかというのをセットで教えてくれていました。

今でも思えているシーンがあります。

歩いていると、横から女の子が飛び出してきてぶつかりそうになります。
女の子をなんとかかわして、謝るというシーンです。

まず出てきたことにビックリしなければなりません。
これが、とても難しかったのです。

見ていると何でビックリできないの?と思ってしまうのですが、いろんな人がやってみてもうまくいきませんでした。
私もやったのですが、もちろんできませんでした。

そして、演出家の先生が私にこう言いました。

もう一度やってもらいます。
何が起きても演技をやめずに最後まで集中して演じてください。

どういう意図があるのか全くわかりませんでしたが、言われたとおりに演技を続けようと思いました。

そして、女の子が飛び出してきた瞬間、「バンッ!」という大きな音が稽古場に響きました。
演出家の先生が木材で床を叩いたのです。

その大きな音に稽古場にいる全員が驚きました。

演技が終わると演出家の先生が話し出しました。

大きな音がしてみんなびっくりしたと思うけど、そのとき体の状態はどうなった?
ビックリして息が止まったんじゃない?

そうなんです。
みんな驚いた演技をしようとしていて、本当に驚いていなかったからできなかったのです。
驚いた時、体の緊張はどうなるのか、呼吸はどうなるのか、それを思い出して、感じて演技していなかったからできなかったのです。

そうやって演技の初歩的なことを少しずつ教えてくれながら立ち稽古は進んでいきました。

いよいよ自分のシーン。地獄の始まり。

1シーンから少しずつ進んでいき、とうとう私の出番があるシーンの立ち稽古になりました。

私は自分の役の出番なので台本通りに舞台上に出てきて演技をしようと思いました。
そして、自分のセリフをしゃべろうとした瞬間、止められました。

そして演出家の先生からこう言われました。

何をするためにここに来たの?
あなたの目的は何?

当時の私は答えられませんでした。
台本に書いてあるから出てきて、台本に書いてあるからセリフをしゃべろうとしていたのです。

ダメ出しをされ、自分の目的も明確にしてもらい再度演技をしましたが、同じダメ出しを受けてしまいました。
解釈を演技に反映できず、演技を変えることができなかったからです。

当時の私はどうやって解釈を演技に反映していけばいいのか全く分からなかったのです。
どうやればそう見えるのか全くわからず、何度も何度もダメ出しを受けてしまっていました。

セリフに関しても同様のダメ出しをもらっていました。

そのセリフで相手をどうしたいの?
どんな感情なの?
目的はなんなの?

当時の私はただしゃべっているだけの状態だったのです。
セリフの中身について全く考えることができませんでした。
そして、ダメ出しされたことについても応えることができませんでした。

どうすればいいのか全くわからず、苦しんでいるだけでした。

演技が上手くなるために

当時の私は練習しても練習しても全く演技が上達しませんでした。

今から考えるとわかるのですが、練習の仕方が悪かったのです。

しかし、当時の私はそんなことがわかるわけもないので、必死にもがきました。
ただ、うまくなりたいというその一心で無駄かもしれませんがあがき続けました。

どうやって出てくれば、役の目的を持って出てきているように見えるのか。
どうすれば、セリフの中身を感じてもらえるのか。
どうやればリアクションで心の中を感じてもらえるのか。

毎日考え自主練習を続けていきました。
もちろん稽古場では相手役に頼み込んで何度も練習に付き合ってもらいました。

こうして練習していくことで、少しづつではありますが、演出家の先生が良くなってきたと言ってくれるようになりました。

ただし、後々気づくのですが、これは見せかけの上達です。
演技を誇張して、わかりやすくしたり、感情が伝わるように頑張って感情を込めたりなど、本質とは程遠いことをしていたのです。
そこに気づくのは何年か先の話です。

当時の私はとにかく必死なので、本質と違うということには全く気付かずにひたすら練習を続けていました。
動きや表情を外側から作り、感情も頑張って込めながら演技をしていました。

それでも、全く何もできていなかった時から考えると、少しはマシになっていたんだと思います。
お客さんが笑ってくれるようなネタも考えたりしました。

稽古の序盤はダメ出しばかりで、何もできず本当に辛い日々を過ごしていました。
しかし、稽古が進んでいくにつれて、少しずつ楽しいことも増えていきました。

下手ながらも努力をしていることはみんながわかってくれていたんだと思います。
本当に同期には恵まれていたと思っています。
そして外側からではありましたが、稽古を重ねていくことで少しずつ演技を構築していくことができていきました。

当時を振り返って

当時の私は本当に何もできませんでした。

何のために出てきたのか、何を思ってしゃべっているのかが全くわからない、伝わらない演技をしていたのです。

ダメ出しを受けて、何とかしたいと思った私は外側から頑張って作ることにしました。
表情を作ったり、動きを考えたり、セリフをこねくりまわして頑張って感情を込めたりとめちゃくちゃです。

初心者の人は絶対にマネしてはダメなことですね。

演技を始めたばかりの人は、心の動きを大事にして演技をしなければなりません。
心が動いているかどうかに重点を置いて演技をするべきなんです。

自分の中で少しでも動いていることが確認できれば初心者のうちはOKです。
少ししか動いていないと見ている人には何も伝わらないかもしれません。

でも、少しずつ心の動きを大きくしていくことができれば、いつかは見ている人にも伝わる大きさになります。
伝わる大きさになるまで少しずつ訓練していくことが大事なのです。

セリフをどう言うのかではなく、その感情になった結果セリフが出てくるということを目指すことがとても大事です。
そのことに当時の私は全く気付くことができませんでした。

この記事を見ている初心者の方は絶対に演技を外側から作るのをやめてください。
心の動き、感情が演技では一番大事なことです。

さて、今回の記事はここまでです。
次回は上演実習の稽古の続きを書いていきます。

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