声優養成所体験談では私がプロの声優になるまでに「学んだこと」「体験したこと」を記事にしています。
全く才能がなかった私が、どうやってプロの声優になったのか。
声優を目指すきっかけから、声優事務所に所属して現場に行くまで、すべての過程を時系列で公開します。
声優を目指したいけど、向いているかわからない、自信が持てないと悩んでいる方はぜひ読んでみてください。
何度も同じダメ出しを受ける

さて、前回の記事では当時の私のダメダメっぷりを書いていきましたが、今回も引き続き当時のダメっぷりを書いていきます。
演技未経験の人が、できないことが多いのは当たり前ですが、それでも当時の私は相当ひどかったと思っています。
まず、私のシーンになると必ず稽古がストップします。
私ができていないので、細かくダメ出しを受け、何度も演技をすることになってしまっていました。
残念ながら当時の私はダメ出しを受けて演技を修正することができなかったので、何度も何度も同じダメ出しを受け続けていました。
私としては真剣に一生懸命やっていました。
しかし、ダメ出しは一向に終わりませんでした。
永遠に終わらないダメ出し、何度も何度も同じシーンの演技をしなければならない恐怖はとてつもないものでした。
演技をしても絶対に途中で止められ、ダメ出しをされるのです。
そして何度やってもうまくできないのです。
少しでも演技をよくすることができなければ、先に進むことはできません。
その間、見ている人たちの視線がとても痛かったことを鮮明に覚えています。
私のシーンになると平気で1~2時間は私の演技に費やされていました。
今思い返すと、よく声優養成所を辞めなかったなと思うくらい辛い時期でした。
何もかもできなかった私ですが、今回はその中でも特にできなかったことを書いていきたいと思います。
演技で笑うこと

私の役はあるシーンの登場時に大笑いする演技がありました。
この笑いの演技がいくらやってもうまくできませんでした。
当時の私は笑うことが全くできなかったのです。
後々わかることですが、この笑いの演技、初心者には難易度が高い演技です。
感情開放がとても上手な人であれば簡単にできますが、当時の私は笑うことが全くできなかったのです。
無理やり笑おうとすればするほど笑えないのです。
そして、無理やり笑おうと一生懸命練習を続けていました。
その頃無理やり頑張ってしまったせいで、当分の間、笑いの演技がトラウマになってしまいました。
トラウマになっていた時期は笑うシーンがあると体が固まってしまっていました。
これは私個人の意見になりますが、笑えない人は無理に笑う練習をする必要はないと思います。
私もそうでしたが、年数を重ねていくうちに自然と笑う演技が少しずつできるようになっていきます。
笑いが苦手な人は少しずつ無理のない範囲で練習していけばいいと思います。
いま現場で活躍している有名声優でも新人の頃は笑いができなかったという人もいるくらいです。
もちろんできる方はどんどん笑いの演技を磨いていくことをおすすめします。
しかし、当時の私のように全く笑えない人が自分を追い詰めて無理やり笑うことを一生懸命やるのはおすすめできません。
笑いの演技がトラウマになった私はその後何年か笑えずに苦労しました。
恐らく、その時に無理しなければ、もう少し早く笑いの演技ができるようになっていたと思います。
演技で人を見つける

目的の人を探して舞台上に登場し、扉を開けて人を見つけるというシーンがありました。
稽古場には本物の扉はありませんので、パントマイムで扉を開けて演技をします。
当時の私はこの人を見つけるというのがとても難しく全くできなかったのです。
パントマイムの扉ですし、そこに探している人がいることを私は知っています。
しかし、私の役はそんなことを知らないのです。
扉を開けて見つける。
これが当時の私は全くできませんでした。

もうそこにいるのを知っている人になっている



最初に見つけちゃだめだと思ってるから見つけ方が不自然になっている



発見できていない
このようにセリフをしゃべる前の段階からダメ出しの嵐でした。
どうすれば目的の人を探しにきて、見つけたように見えるのかがわからず本当に苦労しました。
何度も一人でどうすればそう見えるのかを考えながら動きを必死に練習していました。
リアクション


自分のセリフがないときでも、その場に居なければならないことがあります。
その場合、その役として、そこの場に居なければなりません。
要するにリアクションをし続けなければならないのです。
人の話を聞いているのか、ほかのことに気が向いているのか、その役によって様々です。
当時の私はこのリアクションが全くできていませんでした。
ただ舞台に立っているだけで、休憩しているのと同じ状態だったのです。
その役が何を考えているのか、どう心が動いているのかが見えないというダメ出しをされ続けていました。
少しの表情や動きではわかりづらいというダメ出しもされていたので、人のセリフの時に自分がどう思っているかを台本に書き出し、それを誇張して表情や動きに出すように自主練習をしていました。
当時を振り返って


当時の私はダメ出しを修正して演技をしたつもりでも、修正ができておらず全く同じダメ出しをもらい続けていました。
そのたびにいろいろ考え、一人で自主練習を頑張っていました。
そして、その自主練習はすべて外側に関するものばかりでした。
どう動けばそう見えるのか、どう表情を変えればそう見えるのか、どうすれば笑っているように見えるのか。
そういった結果だけに執着して一生懸命練習をしていたのです。
もちろん一生懸命練習したので、少しずづ形にはなっていき、ダメ出しの量も減ってはいきました。
ですが、俳優、声優としては全く進歩していない状態だったのです。
本当であれば、心の動きを大切にして、内側から少しずつ作っていかなければなりませんでした。
それが結果として伴わなかったとしても、長い目で見れば心の動き(感情)を大事にして演技をしていくべきです。
なぜ笑うのか、笑いたくなるのはどうしてなのか。
それを理解し、感情を少しずつ動かしていけばよかったのです。
もし、少ししか笑う気持ちにならなかったのなら、少しだけ笑えばよかったのです。
大笑いする気持ちになっていないのに大笑いを頑張ってやろうとしてもできないのは当然です。
人を見つけることもリアクションも同じです。
まず、心が動くこと、そこを丁寧に作っていくことが一番大事だったのです、
そう見えるような動きや表情を頑張って作っていましたが、感情は全く動いていませんでした。
心の動き(感情)を無視して外側だけを一生懸命作っても何の意味もありません。
そうなっていた一番の原因はハッキリしています。
当時の私は、心の動き(感情)と言われても、何を言っているのか全く理解できていなかったのです。



心が動くってどういうことだ?
どんな感情って言われても・・・
そうなんです。
当時の私は心が動いて演技をするということの意味がよく分かっていなかったのです。
そんなことでは、演技ができるわけがないですよね。
でも実際演技を始めてから何年間かは心の動きというのがわからない状態で演技をしていました。
何度も言いますが、演技をするうえで一番大事なことは心の動き(感情)です。
演技をこれから始める人、初心者の人はまず心の動き(感情)を一番大事にして訓練に励んでください。
さて今回の記事はここまでです。
次回も上演実習の続きです。
いよいよ本番が近づいてきます。

