アテレコが上手くなるコツはふつうにしゃべること!声優はマイク前で自然に演技をしている

「アテレコが下手な気がする」
「マイク前になると、うまく演技ができない」
「自分の声が、映像に合っていない気がする」

こんな風にマイク前、アテレコの演技で悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

実は声優を目指している人の中で、マイク前の演技が苦手な人というのは一定数います。

自分の中で試行錯誤を繰り返し、上達していく人もいます。
しかし、中には自分では解決できずに、声優を目指すことを諦めていく人もいます。

今回は、そんなマイク前、アテレコの演技で悩んでいる人に向けて「ふつうにしゃべる」ことについて解説していきます。

「ふつうにしゃべる」ことができれば、マイク前、アテレコの演技がきっと上達します。

目次

自分で見つけていく力

まず大前提の話になりますが、プロの声優を目指すなら、「自分で見つけていく力」というのが、とても重要になってきます。

声優養成所や声優専門学校では、講師の方々がいろいろな指導やアドバイスをしてくれます。
その指導やアドバイスを、すべて鵜呑みにして、盲目的にトレーニングをやるだけでは、絶対にプロの声優にはなれません。

トレーニングをしていく中で、自分の体を観察し、様々な発見をしていくことがとても大切なのです。
そして、自分に合っていないと思ったトレーニングは、切り捨てていくことも必要です。

講師の方々は、生徒達が「発見」できるヒントになればと思い、様々な体験談や方法論でアドバイスをしてくれているのです。
それに対して何も考えず、ただ教えてくれたことを盲目的にやっているだけでは永遠に「発見」はできません。

マイク前の演技について、今回は少し踏み込んだ内容の記事となりますが、盲目的にとらえず、「発見」できるヒントにしてもらえればとても嬉しいです。

「ふつうにしゃべる」演技とは

私が初めて声の現場に行ったときの話です。
海外ドラマのシーズンもので、ゲストキャラとして初めて現場に呼んでもらえました。

若手中心でメインキャストがキャスティングされていたので、同年代が多かったように思います。

プロの声優として活躍されている人たちはとても上手なんだろうな。
何か一つでも盗んで帰らないと。

そんな風に思って現場に行きました。

収録が始まり、私は少し驚きました。

あれ?
みんな普通だな・・・。

プロの声優というのは、とてつもなく上手いという意識で現場に入った私は、不思議な感覚に陥りました。

みなさんの演技が「ふつう」に聞こえたのです。

当時の私はわかりませんでしたが、この「ふつう」というのがとても大事なことなのです。

私個人の意見にはなりますが、「ふつうにしゃべる」ということができれば、プロの声優に手をかけることができると思っています。

ただ、この「ふつうにしゃべる」ということが、実は声優志望者の多くができないことなのです。

まず、プロの声優になりたいのであれば「ふつうにしゃべる」ということができるようになりましょう。
そして「ふつうにしゃべる」ことができれば、マイク前の演技がとても楽になります。

あなたは声優養成所・声優専門学校で「ふつうにしゃべりなさい」と言われたことはありませんか?

私は様々なシーンで、色々な方に、ふつうにしゃべりなさいと、何回も言われてきました。

もちろん最初からできている人もいます。
ですが、私はふつうにしゃべることができていませんでした。

「ふつうにしゃべる」ということがどういうことなのか、できていない人は、自分で見つけていくしかありません。

もしもマイク前の演技が上手くできず、周りの人たちよりも劣っていると思うのであれば、「ふつうにしゃべる」ということに意識を向けてみてはいかがでしょうか。

3人のプロから「ふつうにしゃべりなさい」と言われた経験談

まず一番最初に「ふつうにしゃべりなさい」と言われた経験から話していきます。

声優養成所に通い始めた1年目のことでした。
発声の先生はいつもみんなに「ふつうにしゃべれ」と言っていました。

1年目の発声のレッスンでは、自分の本当の声を見つけ、その声でただしゃべるということを目標にしていました。

生きてきた中でついた悪いクセ、演技経験者は演技を学んできた中でついた悪いクセ、それを全部無くして、自分の体(楽器)本来の音を鳴らす。

それを目標に発声のトレーニングをしていきました。

トレーニングの中ではいい声が出ているのに、演技に入ると途端にいつもの発声、クセが顔を出してきてしまうのです。

そのたびに発声の先生はこう言っていました。

なんでそのままふつうにしゃべらないんだ。
余計なことはせずに、ふつうにしゃべればいいんだよ。

そのとき、私はこう思いました。

ただ、ふつうにしゃべってしまったら、中身が何もない状態になってしまうから怖くてできない。

演技なのだから、感情を込めたり、声を張ったり、何かしなければ何も伝わらないと思っていました。

そうなんです。
発声の先生と当時の私の「ふつうにしゃべる」ということへの認識がズレていたのです。

結局私はその「ズレ」を気づくことができずに1年目は終わりました。

そして次に「ふつうにしゃべりなさい」と言われたのは、声優事務所に所属して初めてのボイスサンプル収録の日でした。

ボイスサンプルの収録を担当してくれたのは、大御所のディレクターの方でした。
業界内では知らない人はいないと言われるくらいの人ですので、そんな方にボイスサンプルを担当してもらえたのはとても貴重な経験でした。

私はこの日の為に一生懸命練習してきました。
ブースに入り、練習通りに一つずつ演技をしていきました。

演技が終わった後、ブースの中にディレクターが入ってきて、こう言いました。

ふつうにしゃべりましょう 。

私はそのダメ出しにビックリしました。
少し感情的になるようなサンプル案も作ってきていたのですが、それも「ふつうにしゃべろう」と言われたのです。

あなたの声で、ふつうにしゃべりなさい 。

まさに声優養成所1年目に発声の先生に言われたことと同じことを、ここでも言われたのです。

そのあとの収録はとても苦労しました。
ふつうにしゃべるということがまだわかっていなかった当時の私は、何度も何度も録り直しすることになりました。

私は正直どんな仕上がりになっているのか収録が終わった後もわからない状態でした。

そして後日、完成したボイスサンプルを聞きました。
そのボイスサンプルは、とてもいいものになっていて驚いた記憶があります。

しかし、この時点でも私はまだ「ふつうにしゃべる」ということがわかっていませんでした。

そして最後に「ふつうにしゃべりなさい」と言われたのは、またボイスサンプルを収録した時でした。
最初に所属していた声優事務所から、違う声優事務所に移籍した時の話です。

新たにボイスサンプルを収録するため、ディレクターの方に見てもらっていたのですが、また同じことを言われてしまったのです。

目の前にいる人に向けて、あなたの声で、ふつうにしゃべりなさい。

このときの私は、少しずつではありますが、ふつうにしゃべるということを気づき始めていた時期でした。
四苦八苦しながらも収録を終え、家に帰ってから真剣に考えました。

ふつうにしゃべるってどういうことだ?
どうすればふつうにしゃべることができるんだ?

そして、それから1年間徹底的に「ふつうにしゃべる」ということを意識してトレーニングに励みました。

そのおかげで翌年のボイスサンプル収録ではふつうにしゃべりなさいと言われることはありませんでした。

ここでようやく私は「ふつうにしゃべる」ということをできるようになったのです。

「ふつうにしゃべる」ことができるようになるために

ふつうにしゃべれるようになるためにはどうすればいいか。
簡単に言うと「声の出し方」だと私は思っています。

私が最後に「ふつうにしゃべりなさい」と言われたのはナレーションの題材でした。

目の前にいる人に向けて、あなたの声で、ふつうにしゃべりなさい。

この言葉が大きなヒントになりました。
私はこれができるようになるまで必死にトレーニングをしたのです。
そして、目の前にいる人に話しているように聞こえる声の出し方を模索し続けたのです。

感覚的な話になってしまいますが、私の場合は、声を放ち過ぎていたのが原因でした。

もっと近く、目の前に、声を出す、声を遠くに離すことをやめる。
こう考えトレーニングしていきました。

声の出し方を変えていきましたので、最初は辛かったです。
いままでと違う方法で声を出していったので、最初は大きな声が出せませんでした。

大きな声を出してしまうと、いつものクセで声を放ってしまうからです。
少しずつ少しずつ、目の前に声を出す声の出し方で、大きく声が出せるようにトレーニングしていきました。

トレーニング方法はいたって簡単です。

距離としては1メートル以内、目の前いる人に向けて、声を出すということを永遠に繰り返します。

感情など一切入れずに、素読みで文章をきちんと読むということを意識しました。
文章であれば何でもいいので、とにかく読みまくりました。

そしてその声の出し方がベースとなるように体に染み込ませていきました。

あなたは、目の前にいる一人に向けて、話かけることができますか?
そう聞こえる「声の出し方」ができますか?

小声でしゃべるわけではありません。
これは声の音量の話ではないのです。

これができる状態でなければ、マイク前の演技はとても苦しいものになります。

マイク前の演技がうまくできず、悩んでいるなら、まずは「ふつうにしゃべる」ということを模索してみてはいかがでしょうか。

最後に

今回は「ふつうにしゃべる」ということに焦点を当てていきました。

「ふつう」という言葉はとても難しいのですが、プロの方々が言う「ふつうにしゃべる」というのがどういうことか、一度真剣に考えてみることをおすすめします。

まずは、あなたの「地声」で、「目の前の人」に、「ふつうにしゃべりかける」ということができるになりましょう。

もちろんこの地声というのは、あなたが基礎訓練で鍛えた響きのある力強い声のことです。

あなたの地声で、目の前の人にふつうにしゃべることができるようになったら、今度はそこに演技を加えていくのです。

遠回りのように感じるかもしれませんが、プロの声優になるためには、絶対に必要な基礎であり、技術です。

恐らく才能や感性がある方たちは無意識で使い分けをしています。

才能や感性に優れている方たちと戦っていくためには、その人たちが無意識でやっていることを分析し、意識的にできるようにしていかなければなりません。

もし、あなたがまだ、「ふつうにしゃべる」ということを習得できていないのであれば、これを機に必死にトレーニングしてみてはいかがでしょうか。

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